ワイヤレス給電は、携帯端末やコードレス家電などの充電に通常必要とされるケーブルを不要にします。ワイヤレス給電により、バッテリ駆動型家電をワイヤレス給電トランスミッタや指定の充電装置のそばに置くだけで、家電内部のバッテリを充電することができます。その結果、家電のケースを完全に密封し、さらに防水化することもできます。また、このような直接的な便利さに加え、ワイヤレス給電は、信頼性を大幅に高めることができます。家電側の充電プラグは機械的な損傷を受けやすく、不注意で間違ったアダプタにつないだだけで破損することがあります。ワイヤレス給電の基盤となる原理は、よく知られているファラデーの電磁誘導の法則で、この法則に基づく誘導電圧はモータや変圧器に広く利用されています。

ワイヤレスバッテリ充電の用途

  • スマートフォン、ポータブルメディアプレーヤ、デジタルカメラ、タブレット、ウェアラブルデバイス:一般のユーザーは、充電のポジションに制約がなく、充電時間の短い、使いやすいソリューションを求めています。これらの用途では通常、2~15Wの電力が必要です。また、マルチスタンダードの相互運用も求められます。ワイヤレス給電は、NFC(近距離無線通信)やBluetoothと共存することが可能で、非常にクリエイティブなソリューションを実現できます。たとえば、1組の携帯電話を背中合わせに置いたとき、それぞれがホストとクライアントとしてネゴシエーションを行うことで、相互に充電することが可能になります。
  • アクセサリ:ヘッドセットやワイヤレスのスピーカ、マウス、キーボードなど、さまざまなアプリケーションにおいて、ワイヤレス送電からメリットを得ることができます。かつてないほど小型化が進んでいる機器において、充電ケーブルを小さなコネクタをつなぐことは、ロバスト設計を妨げる要因となります。たとえば、Bluetoothヘッドセットをジム環境で普及させるには防汗性が必要です。それを実現できるのは、ワイヤレス給電だけです。
  • 公共の充電ターミナル:充電パッド(トランスミッタ)を公共の場に配備するには、安全でセキュアなシステムが必要となります。スマート充電システムは、スタンドアロン型の充電ソリューションに比べてはるかに優れています。ネットワーク接続を迅速に実現することが可能で、必要に応じて課金制の充電装置を構築できます。多くのコーヒーショップや空港の売店、ホテルなどでこのような展開が可能です。また、家具メーカーも、目立たないワイヤレス給電トランスミッタをサイドテーブルなどに組み込むことができます。
  • コンピュータシステム:ラップトップやノートブック、ウルトラブック、タブレットPCなどは、ワイヤレス給電の送電側としても受電側としても利用できます。可能性は無限に広がります。
  • 車載アプリケーション:ワイヤレス充電装置を車内のダッシュボードや中央コンソールに配置すれば、携帯端末やキーフォブを充電するのに理想的で、シガーライターソケットにケーブルを接続する不便さから解放されます。また、BluetoothやWi-Fiの場合、カーエレクトロニクスに携帯端末を接続する際に認証が必要となりますが、NFCとワイヤレス給電を組み合わせると、携帯端末を充電できるだけでなく、車内のWi-Fi/Bluetoothネットワークに自動的に接続することが可能で、特別なセットアップ手順が不要になります。
  • 電気自動車:大きな電力が必要となりますが、電気自動車(EV)向けのスマート充電装置も開発されています。現在、標準規格の策定が進められています。
  • その他:ワイヤレス給電は、バッテリを内蔵するあらゆるものに利用できます。ゲーム機やリモートTV、コードレス電動器具、コードレス掃除機、ソープディスペンサ、補聴器、さらには心臓ペースメーカーにも利用可能です。ワイヤレス給電は、スーパーキャパシタ(超コンデンサ)をはじめとする、これまで低電圧の電力ケーブルから電力を得ていたさまざまな機器を充電することができます。

ワイヤレス送電向けワイヤレス給電規格

ワイヤレス給電規格は現在、Qi、PMA、Rezenceという3つの主要規格が競合しています。いずれもこの数年の間に登場したものです。詳細については、下記に説明します。これら3種の規格は、いずれも基本的にファラデーの電磁誘導の法則に基づいており、誘導コイルを活用して、ワイヤレス送電を実現しています。ただし、それぞれ動作周波数や制御方式が異なります。そのため、各ワイヤレス給電規格は、それぞれに固有の技術的メリットがあり、業界の支持や市場シェアも多様です。

Qi(チー)は、中国の伝統文化である「気」に由来しています。気は、自然のエネルギー、生命力、エネルギーの流れなどを意味しています。Qiは、ワイヤレスパワーコンソーシアム(WPC)が策定した産業規格です。Qiは現在、最大5mmの距離で最大5Wのワイヤレス電力伝送をサポートしています。まもなく最大15Wへの拡張が予定されており、将来的には、はるかに離れた距離で120Wの充電を実現する予定です。

業界標準規格を策定する最も重要な目的は、相互運用性を実現することです。たとえば、Qiロゴの付いたレシーバであれば、Qiロゴの付いたどのトランスミッタパッドにも置くことができます。ワイヤレスレシーバのチップがマルチスタンダードの相互運用性をサポートしている場合、異なる規格に基づくパッドであっても動作可能です。近い将来、個々のメーカーが独自開発した充電装置を旅行のときに持ち運ぶ必要はなくなるでしょう。

Qi規格がおおむね100~200kHzの周波数で動作するのに対し、PMA(パワーマターズアライアンス)規格は、ほぼ2倍の周波数で最大5Wの給電に対応します。PMA規格とQi規格は非常によく似ており、どちらも電磁誘導(MI)の原理に基づいています。ただし、ワイヤレス給電のレシーバとトランスミッタ間の通信方法は異なります。

最近、PMAは、A4WPと統合規格を策定することに合意しました (Airfuel Alliance)。Airfuelは、MIとわずかに異なる磁気共鳴(MR)という原理に基づいています。この規格の初期バージョンは3.5Wと6.5Wの電力転送に対応していました。最近になり、50Wまで拡張されています。MRも電磁誘導の法則に基づいていますが、レシーバコイルとトランスミッタコイルの結合が緩く、それでも密接に同調するように構成されています。Q(品質係数)が高く、およそ7MHzで共振による伝送を実現します。そのため、Airfuelは、レシーバに対するトランスミッタの物理的配置を柔軟に設定できます。

ワイヤレスバッテリ充電システムの主要コンポーネント

  1. ワイヤレス給電トランスミッタは、5~19Vの入力DCレールによって電力を得ます。電力源は通常、USBポートやAC/DC電源アダプタです。
     
  2. 2つまたは4つのFETを使用したスイッチトトランジスタブリッジがコイルと直列コンデンサを駆動します。直列コンデンサによって、共振周波数が内部で設定されます。
     
  3. トランスミッタにはコイルがあり、電磁誘導によって電力を伝送します。一部のトランスミッタはマルチコイルアレイをサポートしており、独立したブリッジで駆動されます。ブリッジは、ワイヤレス給電レシーバに最高の結合電力を送電するよう自動的に選択されます。
  4. 誘導電力は、ワイヤレス給電レシーバに結合されます。レシーバには、入力電力を集める同様のコイルがあります。
     
  5. レシーバは、ダイオード整流器によって電力を整流します。整流器は通常、効率性を高めるため、FETで構成されます。また、レシーバは、セラミック出力コンデンサを使用して電力のフィルタリングを行い、リニアステージまたはスイッチングレギュレータを通じて、充電が必要なバッテリに給電します。
  6. ポータブルデバイス内のバッテリが受電し、充電されます。レシーバは、トランスミッタに対して、充電電流や充電電圧を調整するよう指示し、充電の完了が示されたときには電力伝送を完全に停止するよう指示します。

ワイヤレス給電バッテリ充電システムのブロック図

設計上の主な検討事項

ワイヤレス給電は、非常に高度な分野であり、IDTの得意分野でもあります。ワイヤレス給電システムを端末に組み込む際は、まず、どのワイヤレス給電規格が用途に最適かを判断する必要があります。場合によっては、IDTは、相互運用性と利便性を最大化するためデュアルモードのソリューションを提供しています。

コイルの選択は、採用する規格によって決まります。大手磁気ベンダーは、いずれも同じ標準コイルを提供しています(定義に基づきます)。エンジニアは通常、入力DC電圧や出力要件にもよりますが、用途に基づいてコイルを選択します。ただし、適切なコイル形状やコイルタイプは通常、特定のレシーバ/トランスミッタICソリューションの評価キットで利用されていたものになります。

通常、コイルと関連エレクトロニクスを調整するため、レシーバ内にわずか数ミリメートル程度の空間が必要とされます。場合によっては、端末内で発生するノイズやEMIによる干渉を防ぐため、何らかのシールドが必要となることがあります。通常、ワイヤレス充電装置に残量計は組み込まれていないため、この機能は別途サポートする必要があります。

統合時のもう一つの考慮事項として、金属ケースを越えて電力を伝送することはできません。金属は、トランスミッタからレシーバを完全に遮蔽してしまいます。そのため、システム設計では、レシーバのケースとして利用できる比較的平たいプラスチックインタフェースを用意し、双方のワイヤレス給電コイルが互いに面するように設定する必要があります。また、プラスチックケースの厚さは数ミリメートル以内に抑える必要があります。それ以上厚いと、電力の伝送に影響するおそれがあります。

最後に、金属の異物を正確に検出することが必要となる場合があります。電力の伝送路に異物が存在すると、過熱状況が発生するおそれがあります。このニーズに対応するため、IDTのソリューションはすべて、堅牢な異物検出機能と制御回路を備えており、すべての主要な安全基準に適合しています。

ワイヤレス給電ソリューション業界を牽引するIDT

IDTは、ワイヤレス給電分野においてリーダーとしての地位を確立しており、WPC、PMA、Airfuel™ という3つの主要な規格団体と密接に協業しています。この協業関係を基にして、IDTは、他の主要なイノベータとも密接に協業し、ワイヤレス給電の課題に対処できるソリューションの開発を進めています。

その結果、IDTは、WPC、PMA、WPC/PMA(デュアルモード)に準拠したワイヤレス給電レシーバICを幅広く提供しています。IDTのデュアルモードレシーバは、5Vで5Wを実現し、降圧DC-DCスイッチングレギュレータまたはトラッキングLDO(低ドロップレギュレータ)のいずれかを備えています。

また、IDTは、WPC準拠トランスミッタも提供しています。19~12Vの幅広い入力要件に対応し、5Vアダプタまたは2A USBポートで動作します。すべてのワイヤレス給電製品は、デザインインのプロセスを支援する強力なソフトウェアツールや設計ガイドによってサポートされています。

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